AI詐欺の最新事例2026|ディープフェイク会議・音声クローンの手口と企業の対策
この記事の要点
- 2026年は、AIで操作した声や偽のビデオ会議で送金させる詐欺が、スイス(1月)とシンガポール(5月)の警察から公表されました。
- 手口の多くは、メールやメッセージ、電話で「秘密の案件」を持ちかけ、偽の声や会議で信用させ、別のチャットや電話で指定の口座に送金させる流れで、2024年の香港の事件とも共通しています。
- 日本では2026年1〜6月に、社長を装ってメールとSNSで送金させる「ニセ社長詐欺」が127件・約38億8,000万円確認されました(警察庁)。編集部の見方では、ここに声や映像が加わると、さらに見抜きにくくなるおそれがあります。
- FBIは、AIで作られた映像や声は見分けるのが難しくなっていると警告しています。編集部は、見抜くことより、登録済みの番号への折り返し確認と複数人承認という送金の手順を対策の中心に置くことを勧めます。
画面の向こうの社長や財務責任者が、本人の顔と声で「至急、送金してほしい」と言ったら、断れるでしょうか。AIで作った偽の映像や声(ディープフェイク・音声クローン)を使って企業に送金させるAI詐欺の代表例は、2024年に香港で約2億香港ドルが送金された事件です[1]。2026年に入っても、スイスとシンガポールで、経営者やビジネスパーソンを狙った同じ型の被害が警察から公表されています[3][4]。
日本では、社長を装ったメールから送金させる「ニセ社長詐欺」が、2026年上半期だけで約38億8,000万円の被害を出しています[11]。この記事では、2026年10月27日時点で確認できた警察・政府機関の発表と報道をもとに、最新の事例、送金に至る流れ、慎重な人でもだまされてしまう理由、そして経営者・経理・総務・情シスが今日から整えられる対策を整理します。
なお、ディープフェイクの作り方や、検知をすり抜ける方法は扱いません。扱うのは、見抜くための手がかりと、見抜けなくても送金を止める方法です。
AI詐欺で、いま企業に何が起きているのか?
AIを使って送金させる詐欺の公表は、2026年も続いています。AIで操作した声で取引先を装った電話(スイス)や、政府高官の偽のビデオ会議(シンガポール)によって、いずれも多額の送金が起きました[3][4]。FBIも2026年7月、IC3(FBIの苦情窓口)をかたる詐欺への注意喚起の中で、詐欺師が企業の幹部などを装うためのリアルタイムのビデオ通話用の映像を作っていると警告しています[6]。
2024年1月
香港:偽のビデオ会議で約2億香港ドル
英国本社のCFO(最高財務責任者)を装うメールの後、事前に録画された偽の会議に招かれた担当者が、5つの口座に送金しました[1]。被害企業のArupは、偽の声と画像が使われたことを自ら認めています[2]。
2026年1月19日
スイス:AIで操作した声で取引先を装う
シュヴィーツ州警察は、州内の企業が「知っている取引先」を装う電話にだまされ、数百万スイスフランをアジアの口座へ送金したと発表しました[3]。
2026年2月13日
警察庁がニセ社長詐欺に注意喚起
社長を装うメールでSNSグループを作らせ、送金させる手口について、法人向けの注意喚起を出しました[10]。
2026年4月
Europolが年次の脅威評価を公表
生成AIがオンライン詐欺を加速させ、ビジネスメール詐欺やCEO詐欺のリアリティを高めていると指摘しました[9]。
2026年5月14・16日
シンガポール:政府高官の偽Zoom会議
首相らの姿をディープフェイクで作った会議の後、被害者が少なくとも490万シンガポールドルを送金した事件を警察が公表し、会議の映像も公開しました[4][5]。
2026年7月20日
FBIがAI映像による幹部なりすましに言及
注意喚起の中で、企業の幹部や法執行機関を装うリアルタイムのビデオ通話用の映像が作られていると述べました[6]。
2026年9月
警察庁の半期報告
警察庁は、2026年上半期のニセ社長詐欺を127件・約38億8,000万円と公表しました[11]。
米FBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)には、2025年にAIに関する情報を含む苦情が2万2,364件寄せられ、調整後の損失は8億9,300万ドルを超えました[8]。このうち、ビジネスメール詐欺(BEC:取引先や経営者を装って送金させる詐欺)でAIが関わると報告された損失は3,000万ドル超です[8]。
BEC全体の2025年の損失は約30億4,660万ドルなので、AIが関わると報告された分はまだ一部です[8]。ただしFBIは同じ報告書で、音声クローンが送金の依頼に使われうると明記しています[8]。被害者がAIの関与に気付かないまま届け出ている可能性もあり、編集部の見方では、この数字は実態の下限と考えるのが妥当です。
生成AIはオンライン詐欺を加速させ続け、EU域外の犯罪ネットワークが筋書きを簡単に相手ごとに作り分け、EU市民を高速かつ大規模に狙えるようにした。その例が、AIを使ったなりすまし(銀行のヘルプデスクや法執行機関の職員など)と、ビジネスメール詐欺(BEC)やCEO詐欺のリアリティの向上である。
Generative AI continued to accelerate online fraud, enabling criminal networks operating from outside the EU to personalise narratives with ease and target EU citizens at high speed and vast scale. This is exemplified in AI-assisted impersonation (e.g. of bank helpdesk or law enforcement personnel), and enhanced realism in business email compromise (BEC) and CEO fraud.
2026年の主な事例では、何が使われたのか?
2026年の主な事例に共通するのは、よく知っている相手か、逆らいにくい立場の相手を装っている点です。使われた手段は、AIで操作した声の電話、メッセージアプリ、メール、偽のビデオ会議と事例ごとに違いますが、どれも最後は指定された口座への送金で終わっています[3][4]。
スイス:AIで操作した声で取引先を装った電話(2026年1月)
シュヴィーツ州警察によると、犯人は州内の企業のオーナー(経営者)に電話をかけ、知っている取引先になりすましました。その際、AIで操作した声が使われていました[3]。オーナーは「秘密の国際取引」という口実で複数回の送金を求められ、合計で数百万スイスフランをアジアの銀行口座に送りました。詐欺だと分かったのは、支払いがすべて終わった後でした[3]。
この事例で注目したいのは、だまされたのが経理の担当者ではなく会社のオーナー(経営者)本人だった点です。編集部の見方では、送金の権限を持つ人が自ら動くと、社内の承認手続きが働きにくくなります。州警察が企業の経営陣に向けて予防策を示したのも、そのためと考えられます[3]。
シンガポール:政府高官の偽Zoom会議(2026年5月)
シンガポール警察は5月14日、内閣官房長官ら政府高官を装う詐欺に注意を呼びかけました。政府高官と接点のあるビジネスパーソンが狙われているとみられます[4]。ある被害者は、内閣官房長官を装うWhatsAppで首相との会議への出席を求められ、続くメールでホルムズ海峡の情勢に関する至急の資金協力を求められました。メールには首相の署名入りに見える保証書が添付されており、被害者は秘密保持契約(NDA)にも署名しました[4]。
その後招かれたZoom会議には首相らが参加しているように見えましたが、参加者はディープフェイクで作られていました。被害者は会議の後、少なくとも490万シンガポールドルを指定の法人口座に送金し、本物の内閣官房長官に連絡して初めて詐欺だと気付きました[4]。警察は2日後に会議の映像を公開し、この手口では被害者が民間からの参加者の一人として会議に紹介され、会議の後に弁護士を名乗る人物が別に連絡して送金を説得すると説明しています[5]。
| 時期・地域 | 装った相手 | 使われたもの | 被害 | 発表元 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年1月・香港 | 英国本社のCFO | メール、事前録画の偽ビデオ会議、メッセージアプリ[1] | 約2億香港ドル(5口座へ)[1] | 香港政府(立法会答弁)、被害企業[1][2] |
| 2026年1月・スイス | 知っている取引先 | AIで操作した声の電話[3] | 数百万スイスフラン(アジアの口座へ)[3] | シュヴィーツ州警察[3] |
| 2026年5月・シンガポール | 内閣官房長官、首相ら政府高官 | WhatsApp、メール、偽のZoom会議[4] | 少なくとも490万シンガポールドル[4] | シンガポール警察[4][5] |
金額は各発表の表記どおりです。円換算はしていません。
日本企業にも関係があるのか?
関係があります。国内で警察が公表している企業向けの手口は、声や映像ではなくメールとSNSを使う「ニセ社長詐欺」ですが、社長を装って送金させるという狙いは同じで、被害額はすでに大きくなっています[11]。偽の映像を使ったビデオ通話も、個人を狙う特殊詐欺ではすでに確認されています[11]。
警察庁によると、ニセ社長詐欺は2026年1月ごろから発生しています。ネット上で公開されている会社のメールアドレスに社長を名乗るメールが届き、「新しいプロジェクトのため」などとしてSNSグループを作るよう指示され、そのグループの中で会社の口座残高を答えさせられたうえで送金を求められる、という流れです[10][11]。グループに振込権限を持つ担当者を入れるよう指示される場合もあります[10]。
2026年1〜6月に確認されたニセ社長詐欺は127件、被害額は約38億8,000万円でした。法人が狙われるため高額になりやすく、既遂1件当たりの被害額は約3,100万円です[11]。
同じ報告書には、海外の拠点からSNSのビデオ通話で警察官を装い、顔が識別されないよう顔をAIで生成して被害者をだましていた特殊詐欺グループの被疑者を検挙した事例も載っています[11]。日本国内の被害者を狙った詐欺でも、AIで作った顔をビデオ通話に出す手口が実際に使われていたことを示す、警察の公式な記録です。
| 発表元・時期 | 内容 |
|---|---|
| 警察庁(2026年2月13日) | ニセ社長詐欺の注意喚起。対策として、社内での情報共有、送金ルールの再確認、SNSグループの利用を指示されたときの注意を挙げる[10] |
| 警察庁(2026年9月10日) | ニセ社長詐欺は2026年1〜6月に127件・約38億8,000万円。既遂1件当たり約3,100万円[11] |
| 警察庁(2026年9月10日) | SNSのビデオ通話で警察官を装い、顔をAIで生成していた特殊詐欺の被疑者を検挙(犯行は2024年10月ごろ〜2025年5月ごろ)[11] |
警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」と、SOS47の注意喚起から編集部が整理しました。
AI詐欺は、どんな流れで送金させるのか?
公表された事例を並べると、流れはおおむね5段階に分けられます。AIは主に「信じさせる」段階で使われており、送金そのものは普通の振込で行われています[1][3][4]。
- 標的と素材を選ぶ:香港の事件では、ネット上の公開動画と本人の声が偽の会議の素材になったと警察はみています[1]。シンガポールでは、政府高官と接点のあるビジネスパーソンが狙われたとみられています[4]。
- 最初の接触で「秘密の案件」を持ちかける:メール(香港)、WhatsApp(シンガポール)、電話(スイス)と経路はさまざまで、内容は秘密の取引や至急の資金協力です[1][3][4]。
- 声や映像で「確認」させる:偽のビデオ会議や、知っている相手を装うAIの声の電話で、最初の依頼が本物だと思わせます[1][3][4]。
- 別の経路で具体的な送金指示を出す:会議を打ち切った後にメッセージアプリで指示を続ける(香港)、会議の後に弁護士役が送金を説得する(シンガポール)といった形です[1][5]。
- 複数回に分けて送金させる:5つの口座へ(香港)、アジアの口座へ複数回(スイス)、一連の取引で指定の法人口座へ(シンガポール)と、送金は複数回に分けられています[1][3][4]。

偽のビデオ会議は、必ずしも「その場で受け答えするAI」とは限りません。香港の事件は事前に録画された会議で、被害者と犯人の間に実際のやり取りはありませんでした[1]。シンガポールの偽会議でも、音声は会議中ずっと1つのアカウントから流されていました[5]。編集部の見方では、口実をつけて会議が打ち切られ、その後はチャットで指示が続くという形は、それ自体が手がかりになります。
一方、FBIは、詐欺師がリアルタイムのビデオチャット用の映像を作っていると警告しています[6]。事前録画であれ、その場で動く映像であれ、受け手から見れば「本人が画面に映っている」ことに変わりはありません。手口の違いを見分けることより、次の章で述べる「信じてしまう構造」を理解しておくことのほうが役に立ちます。
なぜ、慎重な人でも送金してしまうのか?
だまされた人が不注意だったわけではありません。香港の事件の担当者は、最初のメールをフィッシングではないかと疑っていました。それでも、ビデオ会議に同僚そっくりの人たちが並んでいたことで疑いを解いたと、警察の説明として報じられています[2]。疑う人ほど「確認」を求め、そこに偽の確認が用意されているのが、この詐欺の構造です。
- 権威:本社のCFO、首相や内閣官房長官など、指示に逆らいにくい相手が選ばれています[1][4]。
- 秘密:「秘密の取引」「秘密保持契約」が持ち出され、周囲に相談しにくい状況が作られます[1][3][4]。
- 至急:「至急の資金協力」のように急ぎであることを強調し、確認の時間を奪います[4][6]。
- 複数の経路でのもっともらしさ:メッセージ、メール、会議と経路を変えて同じ話が繰り返されるため、「別々に確かめた」ような錯覚が生まれます[4][5]。
- 知っている相手:スイスの事例では、犯人は知っている取引先を装い、AIで操作した声を使っています[3]。
AIで生成されたコンテンツは、見分けることが難しい場合が多い水準にまで進歩している。
AI-generated content has advanced to the point that it is often difficult to identify.
ディープフェイクは見抜けるのか?
手がかりはありますが、それだけに頼るのは危険です。警察やFBIが挙げている兆候は、知っておけば違和感に気付くきっかけになります。ただしFBI自身が、AIで作られたコンテンツは見分けるのが難しい場合が多いと認めています[6]。
企業は、何から対策すればよいのか?
編集部が最も重視するのは、声や顔ではなく手順で本人を確かめることです。シュヴィーツ州警察は企業の経営陣に向けて、例外的・至急の支払い指示は別の独立した経路で必ず確かめること、高額の支払いは複数人で承認すること、確認・記録された承認なしに海外送金をしないことを求めています[3]。
例外的な支払い指示や至急の支払い指示は、必ず第二の独立した連絡手段で確認してください。
Verifizieren Sie ausserordentliche oder dringliche Zahlungsanweisungen stets über einen zweiten, unabhängigen Kommunikationsweg.
| ルール | 具体的なやり方 |
|---|---|
| 登録済みの番号への折り返し | 送金や振込先の変更を頼まれたら、依頼と別の経路で、社内名簿などに事前に登録した番号にこちらからかけ直す。相手が伝えてきた番号やリンクは使わない[3][7] |
| 複数人の承認 | 高額の送金は2人以上が承認する[3]。海外送金や初めての振込先への送金にも同じ承認を求める(編集部の推奨) |
| 海外送金の記録 | 海外への送金は、確認した内容と承認者を記録してから実行する[3] |
| 業務外の経路はエスカレーション | WhatsAppや個人のSNS、急に作られたグループなど、普段使わない経路での指示は、応じずに上長と情シスに報告する[10][12] |
| 合言葉・確認質問 | 経営者と経理の間で、電話やビデオ会議のときに使う確認の質問や合言葉を決めておく。会話の内容で確かめるという考え方は香港警察も勧めている[1] |
| 振込先の変更手続き | 取引先の口座変更は、メールやチャットだけで受け付けず、登録済みの連絡先への確認を経てから反映する(編集部の推奨) |
各行は、警察・FBIの注意喚起と企業の公表事例をもとに、編集部が社内ルールの形に具体化したものです。「編集部の推奨」と記した行は、出典のない編集部の提案です。
FBIは、相手が名乗った組織に確かめるときは、相手が示した連絡先ではなく、公開されている公式の情報を使うよう勧めています[7]。社内でも同じで、「電話をくれた番号にかけ直す」のでは確認になりません。経営者・役員・主要な取引先の連絡先は、平時のうちに正式な名簿に登録しておく必要があります。
LastPassでは2024年、CEOを装う音声ディープフェイクの通話や留守電がWhatsAppで社員に届きましたが、社員は普段の業務の連絡経路から外れていることと、不自然に急かされていることに気付いて応じず、社内のセキュリティ担当に報告しました。同社は被害がなかったと公表しています[12]。「普段と違う経路」と「急かされている」こと自体を、止まる合図にするのが要点です。
経営者・経理・総務・情シスが今週確認すること
- 送金と振込先変更の社内ルールを文書で確認し、「電話・ビデオ会議・チャットだけの指示では送金しない」と明記する[3][10]
- 経営者・役員・主要な取引先の連絡先を正式な名簿に登録し、折り返しは必ずその番号にかける(相手が示した連絡先は使わない)[7]
- 高額の送金は2人以上が承認する流れにする[3]。海外や初めての振込先への送金も同じ扱いにする(編集部の推奨)
- 「秘密」「至急」「SNSグループを作って」と言われたら、上長と情シスに報告してよいことを全社員に伝える[10][12]
- 経営者自身が「電話や会議だけで送金を頼むことはない」と社内に宣言し、例外を作らない(編集部の推奨)
- 取引銀行の不正送金の連絡窓口と、最寄りの警察署・警察相談専用電話(#9110)を経理担当の手元に置く[10]
訓練では、何を確かめればよいのか?
ルールを作っても、実際の場面で使われなければ意味がありません。編集部の見方では、訓練で確かめるべきなのは「偽物だと見抜けたか」ではなく、偽物かもしれないと思ったときに、折り返しとエスカレーションを実行できたかです。経営者を装う電話やビデオ会議での送金依頼を想定し、経理担当が登録済みの番号にかけ直すか、上長に報告するか、承認の手順を飛ばさないかを見ます。
訓練の対象には経営者や役員も含めてください。スイスの事例のように、送金の権限を持つ人が直接狙われることがあるからです[3]。また、実在の人物の声や映像を訓練に使う場合は、本人の同意と利用範囲をあらかじめ決めておきます。結果は個人の責任追及ではなく、手順のどこで止まらなかったかの振り返りに使います。AIを使った攻撃の手口の全体像はAI詐欺・ハッキングの手口で、訓練の進め方の例は訓練プログラムで整理しています。
送金してしまったと気付いたら?
すぐに取引銀行と警察に連絡してください。シュヴィーツ州警察は、不審な事案を直ちに銀行と警察に知らせるよう求めています[3]。FBIも、被害に気付いたら詐欺師との連絡を断ち、すぐに金融機関に知らせるよう呼びかけています[7]。被害に当たるかどうか迷う段階でも、警察相談専用電話(#9110)で相談できます[10]。
まとめ
AIで操作した声や偽のビデオ会議を使うAI詐欺は、2026年もスイスとシンガポールで公表され、FBIやEuropolも企業の幹部を装う手口に注意を促しています[3][4][6][9]。日本では、社長を装うメールとSNSで送金させるニセ社長詐欺が上半期だけで約38億8,000万円の被害を出しており、なりすましで送金させる下地はすでにあります[11]。
偽物の品質は上がり続けるため、見抜く力だけに頼る対策には限界があります。登録済みの番号への折り返し、複数人の承認、普段と違う経路や「秘密」「至急」の指示を報告してよいという社内の約束を、今週のうちに文書にしてください。そのうえで、訓練で本当にその手順が使われるかを確かめることが、次の一歩になります。よくある疑問はよくある質問にもまとめています。
よくある質問
AI詐欺とは何ですか?
AIで作った偽の映像や声(ディープフェイク・音声クローン)や、AIで作った文章を使って、相手を信用させて金銭や情報をだまし取る詐欺のことです。企業では、経営者や取引先、政府高官を装った電話やビデオ会議で送金させる手口が、2024年の香港の事件以降、2026年もスイス、シンガポールなどで公表されています。
ディープフェイクのビデオ会議は見抜けますか?
手がかりはあります。シンガポール警察は、唇と音声が合わない、音声が1つのアカウントから流れ続ける、背景がゆがむといった兆候を挙げています。ただしFBIは、AIで作られたコンテンツは見分けるのが難しい場合が多いと警告しています。兆候がなくても本物とは限らないため、送金の判断は登録済みの番号への折り返しなどの手順で行ってください。
日本でもディープフェイクを使った企業の被害は出ていますか?
警察庁によると、社長を装うメールとSNSで送金させるニセ社長詐欺は、2026年1〜6月に127件・約38億8,000万円確認されています。また、AIで生成した顔でビデオ通話に出て警察官を装った特殊詐欺の被疑者も検挙されています。一方、国内企業が音声クローンや偽のビデオ会議で送金させられた事例について、警察や被害企業による公表は2026年10月27日時点で編集部は確認できていません。
音声クローン詐欺を防ぐために、まず何を決めればよいですか?
電話・ビデオ会議・チャットだけの指示では送金しないこと、送金や振込先の変更を頼まれたら社内名簿などに登録済みの番号にこちらからかけ直すこと、一定額以上や海外への送金は2人以上で承認することの3点です。スイスの州警察も、例外的・至急の支払い指示を別の独立した経路で確認することと、高額の支払いを複数人で承認することを企業に求めています。
送金してしまったと気付いたら、どうすればよいですか?
すぐに取引銀行と警察に連絡してください。スイスの州警察やFBIも、銀行への速やかな連絡を求めています。被害に当たるか迷う段階でも、警察相談専用電話(#9110)で相談できます。
出典・参考資料
- 公式発表LCQ9: Combating frauds involving deepfake
- 記事Arup revealed as victim of $25 million deepfake scam involving Hong Kong employee
- 公式発表Kanton Schwyz: Unbekannte erlangen mit CEO-Fraud-Masche Millionen-Betrag
- 公式発表Police Advisory On Scams Involving The Impersonation Of Senior Government Officials, Including Secretary To The Cabinet
- 公式発表Footage From Zoom Video Conference Involving Impersonation Of Senior Government Officials
- 注意喚起FBI Warns of Scammers Impersonating the IC3
- 注意喚起Scammers Impersonating Law Enforcement and Government Officials in Fraud Schemes
- 調査レポート2025 IC3 Annual Report
- 調査レポートThe evolving threat landscape. How encryption, proxies and AI are expanding cybercrime. Internet Organised Crime Threat Assessment (IOCTA) 2026
- 注意喚起法人を対象とした詐欺(ニセ社長詐欺)に注意!
- 調査レポート令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について
- 公式発表Attempted Audio Deepfake Call Targets LastPass Employee
本記事の事実関係は、2026.10.27 時点で上記の出典をすべて再確認しています。